No.34 無意識への誘導 (2)
今私は、「コア・ステート」による前世療法というものを研究している。
この療法を考えついたのは、自分自身に関係することで、最近私が体験した無意識の中の不思議な変化がヒントになった。
今回の体験は、今までの私の不思議な体験の中でも、私の人生に大きな影響を与えた体験の一つに入る。
それは、前世に関係することである。
前世の影響は、人それぞれ違うものであるが、その中でも一番多いのは、子供の頃から自分が好まないまた望みもしないある無意識の反応に左右されながら、つらい子供時代を過ごしてきたことだろう。
それは、大人になってもいつまでも離れることがなく、いつも重苦しいすっきりしない人生を生きなければならないということになる。
そしてそれは、いつも自分の精神を正常な状態にさせないのである。
いつも何かの嫌な感じや不安、恐怖といったものが無意識の中で平常心をかき乱すのである。
いろいろな療法で、自分の子供時代の環境を奥深く探ったり、親や人からの影響を分析したりして、ある程度の原因を導き出して一時的に楽になることはあっても、それでも相変わらず内面からモヤモヤしたものが出てきて苦しめるものである。
このようなことは、ずっとつい最近まで私自身にもあった。
つい最近まであったというのは、今はないからである。
私の場合は、悩み苦しむということとは違うが、それは非常にわずらわしいものであった。
その内容は言えないが、それを分かりやすく表現すると次のようになる。
それは、私の意識の中に、いつでも所かまわずに、我が物顔でしかも土足でズカズカと入ってきて、にらみをきかせて居座る感じであった。
十数年前までは、その勢いに自分としては何もなすすべもなく、ただその勢いに飲まれて言いなりになるという感じであった。
そのようなときは、その感じに負けて自分の本当の思いではない、考えや行動になってしまうのである。
このような感じは、前世のことで苦しんでいる多くの人と共通ではないだろうか。
たとえその勢いが強くなくても、そこに(自分の意識の中)いる感じがあるだけで、集中力が欠けたり、そのことに気を取られたりして、自分自身の本当の思考や行動ができないということにもなる。
このようなことが子供の頃から強く現われていたり、その時期が長かったりすれば、必ず心身に影響が現われ、ひどい人は大きな病気になってしまうのである。
私が自分自身に悪影響を与えるこのようなことに気づいたのは、20代の頃であるが、それはどうすることもできなかった。
そして、潜在意識的な勉強や研究を始めるようになって、何とかしてこの前世的影響を外しにかかったが、またその方法もいろいろやってきたが完全に外すことはできないまま今に至った。
私は、潜在意識からいろいろな方法を試し、それに対することに関してもすべて知った。
今世で何故このようなことに苦しめられるか、その原因になった前世のことも分かった。
そして、それを認め内的意識から冷静見つめることができるようになって、その影響をまともに受けなくすることもかなり出来るようになった。
しかし、それは依然として衰えることなくやってきたのである。
毎日、時も場所も選ばず、そのくらい前世的影響は強いものである。
私はいろいろなことを深く知って、それなりの意識状態を保っているから、まだこの影響もある程度苦にならないくらいに抑えることは出来たが、しかしそれを出来ない人の苦しさは本当によくわかる。
このようなこと以外で、前世的な影響で苦しんでいる人もいると思うが、今述べたことは一般的に多い前世の影響による苦しみである。
前世療法というものがあるが、アメリカの学者によって作られた療法というだけで、詳しいことは分からない。
それにしても、ようやく心理学も前世などという神秘の分野に入って来たという感じだ。
結局、心理学も無意識レベルを理解しなければならなくなってきたということであるが、ユングはすでにそれを知っていた。
私はそのような療法を受けたことはないが、もしそれでよくなる人がいるなら、それは軽い症状か物事を単純に受け入れるタイプの人だと思っている。
もし、本当に、前世の自分がどのようなことで苦しんでいたかが分かったとした場合、我々は、このようなことで今すぐ楽になるのであろうか、その苦しみから解放されるであろうか。
我々が前世で、どのようなことで苦しんでいたか分かるだけで楽になるなら、当然今悩みを持っている人は、どのようなことで苦しんでいるかは知っているはずである。
このことを、そのまま来世にスライドさせて今世を見た場合、どのようなことで悩んでいたかが分かったので楽になりますと言えるであろうか。
問題は、心の奥にある意識にあるのであって、どのような前世であったかなど表面的なことは問題にはならない。
その苦悩を、その人の意識の中でどのような感情で、またどのような思いで、そしてどのような形で良くも悪くも晴らそうとしていたかである。
もっと深く見つめれば、我々はたくさんの過去世から途切れなく続く、そして繋がっている一つの意識の中で、いつの生のときもこれらは一度もすっきり解決することなく、いろいろな生まれ変わりによる環境とともに変化して、また押し込めてきただけである。
今生きている環境が満たされていて、そのような影響がほとんど出なくても、もしその人に最悪の環境がもたらされたら、その人はどう変わるか分からないのである。
自分自身を根本から、何があっても絶対的な意識の自分として保持できるという人は少ないのである。
我々の奥深くに刻まれている過去世のネガティブ意識は、決してすべて明らかに分かることはないのである。
これだけを考えてみても、人間の意識は非常に複雑なのである。
また、前世として出てくるものが、「夢」のように自分の潜在意識が作り上げることもあるということは、ほとんどの人の知らないことである。
我々がもし、「心の無智、いい加減さ」という本当のことを知ることができたなら、心の病気はかなりなくなるだろう。
ここで私自身が前世に関することで、最近体験した驚きの結果について述べてみたい。
前の(1)でも触れたが、「コア・ステート」以上のレベルで「生命意識」があると説明した。
この「生命意識」の働きが今回の不思議の体験である。
私が、「コア・トランスフォーメーション」のことを自宅で考えていたときであった。
そのとき、自分の前世的なことがまた意識を過ぎった。
私は、またかという思いで半ばあきれた気持ちで静かにしていた。
ちょっとの間、気持ちを静かにしていると、何となくいい感じのことがまた意識の中を過った。
そのいい感じが何であるか、静かに、そこに含まれる意味を引き出し理解できるようにしていった。
ある考えが見えてきた。
それは、「生命意識」を無意識の中で前世の正体(ネガティブ意識)に当ててはどうかということだった。
「コア・ステート」も無意識状態で心の問題を解放してくれることを考えれば、少しは理にかなうところがあると思った。
私は、さっそく無意識の中で時間の感覚を離れ、自分から外したい前世のネガティブ意識を意識化し、それに向かって「生命意識」が働くように意識した。
「生命意識」が、その前世ネガティブ意識を消すように強く意識した。
その間は、5~10分くらいの間と感じている。
それが終わったあと、何となく気が抜けている感じがしていたが、前世的なことはすぐに分かることでもないと思い、しばらくパソコンに向かっていた。
でも、何か違う感じがしていたので、ちょっと手を休めて自分に影響を及ぼす前世のことをちょっと見つめてみた。
何か変である、いつもの感じと違うのである。
その嫌なものは、意識の中に感じられるのであるが、そこから反応してこないのである。
まるで、権力者がその地位を追われて、ただの無能力者になったような感じがするのである。
私は思い切ってそれを挑発するように、またそのものに従うような感じで呼びこんでみた。
しかし、それ以上は反応しないのである。
近くにそれがいることはわかっているのであるが、何故かそれ以上反応しないのである。
非常に不思議な感じであった。
それから約一ヶ月になろうとするが、この状態は変わらないどころか、いつでも所かまわず出てくるということもなく、逆にそのことは忘れているくらいで「そういえば」と思って思い出してみる余裕さえあるのである。
一日も完全に消えたことのない前世的ネガティブ意識が、一ヶ月も左右されることがなかったということで、今私は完全にそれに勝利したと思っている。
前世的なことで苦しんでいる人は分かると思うが、そのようなことがいきなり起こるということは、本当にあり得ないことである。
今私は、自分の意識の中で、毎日本当に信じられないくらい静かさを感じている。
その分、今まで以上に集中力を高めることも持続することもできる。
10代から今まで左右され続けてきた前世のネガティブ意識を、たった10分以内で処理する「生命意識」の力にただ驚くばかりである。
私はこの体験で、この「生命意識」の創造性というものを、他のことにもいろいろと働かせることが出来るのではないかと思っている。
また、何かすばらしい体験をしたら載せたいと思っている。
この前世的ネガティブ意識の除去を、「生命意識」の流れにある「コア・ステート」を使って出来ないかと考え、さっそく二人の「コア・ステート」体験者に試してみた。
その方法は、私がその人を無意識レベルに誘導して、そこで本人の前世ネガティブ意識を消滅させるという方法である。
すべて本人の「コア・ステート」を使い、その消滅させることも本人にさせる。
この方法を行なうためには「コア・ステート」の段階が6以上、前世ネガティブ意識が弱ければ5でもできるかどうかということであるが、これもデーターをとって見なければはっきりは言えない。
「コア・ステート」のレベルを6以上にしたのは、働きかけるものが「生命意識」ではなく「コア
・ステート」であるという理由からである。
一人は、前世ネガティブ意識の影響がそれほど強いものではなかったので、一回で何も浮かんで来ないというのが終了した時の感想であった。
二週間経って本人に聞いてみたが、全く影響がないくらいに変化していた。
二人目の人は、典型的な重症な前世ネガティブ意識で苦しめられている人である。
いま20代で、「コア・ステート」の段階は6、子供の頃からいじめ、そして親との間のトラブルなどで10代から大きな病気を抱えている。
子供の頃のいろいろな苦しい思いは、「コア・ステート」によってかなり楽にできるようになったと本人が言うように自分でもこの方法を行なって努力している。
それでも、どうしても消すことの出来ない自分の内側でざわつくものを感じ、やはりそれで毎日気を取られ自分のするべきことに集中できないと苦しんでいる。
子供時代の苦しみも、病気になったのも、すべてこのわけの分からない感じが5,6歳の頃からあったせいだと話していた。
もちろんその前世のことは分からないが、私はその人に、自分の前世がどんなことで苦しんでいたか、たとえそれが出てきたとしても本当かどうか怪しいと疑うくらいなら、そのようなことを知る必要もないし、知ったからといって本当の解決にはならないということを納得させた。
また、今世でこのような自分になったことも、育った環境はどうであれ、親が誰であれ、すべて前世や過去世がこのような自分になる原因として生きてきたことも納得してもらって、誘導に入った。
このようなことを納得せず、いつまでも人のせいにしていると、前世ネガティブ意識は自分で消すことができないかもしれないのである。
私は、それを本人に除去させるために言う言葉は、「自分のことは自分で救え」である。
無意識にある本人の意識は、誰もその人に代わって救うことができないのである。
また、自分でそのネガティブを半分以上消すことが出来れば、本人とって相当の自信になるだけでなく、将来においても強さを付けることになるのである。
この人には、この方法を二回行なった。
一回目の終了後は、その前世ネガティブが自分の奥にあるが反応してこないと言っていた。
その人は、そのネガティブの場面を思い浮かべるだけで涙ぐむくらいの状態だったのである。
それが、いくらその場面を浮かべても何ともないまでになったのである。
私は、全体としてネガティブ意識が何パーセントくらい消えたかを聞いてみた。
本人は、70パーセントと答えた。
私は、この方法を試したのはこの人が最初であった。
まだ、きっちりとした誘導法も確立していないうちに試して見たのであるが、その反応としては合格点であるが、その後どうなるかであった。
一週間後、本人に会ってその後を聞いてみた。
全部が戻ったわけではないが、また別な強いものが自分の奥にあるのを感じると言っていた。
私は、再度今度は前よりきっちりと誘導していった。
そして一週間後、今度はどういう状態になっているかを聞いた。
「それは遠くにあるといった感じ。いやな子供時代の場面を浮かべてもあまり反応してこない」と言っていた。
私の場合と非常に似ている点があるが、それは、今まで苦しめられていたネガティブ(感じ)が近くにあると感じられることや、それが反応してこないということである。
無理に蓋をするとか、忘れるようにと気にしないのではなく、それが近くにいる(ある)と気づいていられ、それが反応してくる力もないと分かるのである。
これも不思議な感じがするといいながら、その表情はすっかり変わっていた。
もう、負けることはないと納得できることが一番である。
「コア・ステート」を体験した人なら、それがどうして自分の意識を変化させるかはわからないが、変化したことは知っている。
普通の人は、何の意識的変化もないまま前世療法を受けている。
しかし、「コア・ステート」を体験した人は、それだけで意識的な力と知恵を得ている。
その力と知恵を持って、さらに深い無意識レベルで、自己のエネルギーと魂の力の援助を得て前世のネガティブ意識をポジティブに変換させるのである。
この方法は、コア・トランスフォーメーションを前世療法として進化させたものとしてもおかしくないだろう。
そのネガティブ除去も、本人自身で行なうところやそれも力を持っている自分として自覚しているところも、これまでの前世療法とは違う。
少なくても自分の持っているコア・ステートの分だけでも、これまでの方法よりは確実だろう。
このように前世ネガティブ意識を消すことができるならば、それより浅い潜在意識レベルの苦しみにも適用できると考えている。